3、追跡してるの?されてるの?


駅全体が見渡せる喫茶店でお姉さまと令様を待つ。
「待ち合わせ時間、十分前。もう令ちゃんはいるね。」
令様は腕時計をちらりと確認する。そして、改札口を見る。
お姉さまは電車かな?
な〜んて考えていると令様の後ろにお姉さまを発見。どうやら先に来ていたらしい。

少しびっくりした様子の令様。それが狙いだったのか、少し笑っているお姉さま。
なんか、ほほえましい。
「やっぱり学校よりフランクな感じよね」
「自然な空気ですね」
なんとなくほんわか。私たちの知らない、紅薔薇、黄薔薇の看板を下ろした二人。
    「すごいのびのび友達してるね」
変な日本語。でも。
「そうね」×2
的を得ていたみたい。
2、3言交わした二人はそのままどこかに行くようだ。
「見失わないうちにいくわよ!」
由乃さんを先頭に私たちもその後を追った。


腕時計を見る。約束の時間まで後十分。祥子ならもう来ていてもおかしくないけれど・・・。
「おまたせ」
「きゃあっ!」
耳元でささやかれてびっくりして飛び上がる。
「さ、ささ。さちこっ!!?」
驚いて後ろを見ると面白そうに笑っている学友の姿があった。
「ごめんなさい、少しいたずらしてみたくなったの。それにしても、かわいい声が出たわね。ふふふ。」
最後に、学校での令の立ち居振る舞いからは考えられないわね。と結んだ。
それを言うなら祥子こそ。昔の姿からは想像もつかない、いたずらなんて。
と言おうとしてやめた。きっと祐巳ちゃんの良い影響でしょう。
「さて、オイタをしている下級生はどこ?」
祥子はさも世間話をしているかのように本題を切り出してくる。微笑んだまま。
これなら声が聞こえていない限り、今日はどこに行くの?なんて会話をしているように見えるだろう。
「あそこの喫茶店。こっちを見てるわ。」
私も同じように笑顔を作る。
「じゃあ、行きましょうか。目的地に」
祥子が歩き出す。慌てて席を立つ由乃たちの姿が時計の反射でかろうじて見える。
「追跡開始!みたいよ」
「でも、監視してるのは私たちよ」
にっこりと笑う祥子を見ておもった。
敵にだけは回したくない・・・。

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