新年。早朝にユアリアに叩きおこされた。

「龍弦さん、起きるでし!」
「なんすか・・・。まだ眠いんすよ・・・。
ふぁ〜っ!お休み・・・」

「だめでし〜!年末にビッグサイトとかに行くから、疲れるんでしよ!」
「それは外せないと言うか、恒例だから、後悔はしていない。」

「そんなことはどうでもいいでしよ〜。起きるでしっ!」

「わかったよ!・・・なんなんだ、一体」
「見てくださいね!」

ユアリアは、一つ大きく息を吸い込むと、普段は見せない真剣な表情で、指先に妖力を込める。

「てやぁあああっ〜〜!」





ぼぅっ!

ほんの一瞬だが、あたりが明るくなる
「おぉ!」
狐火。
妖狐なら誰でも使える、技の一つである。
しかし、親元から離れて暮すユアリアは、今まで満足に出来ていなかったんだけど。

「やったじゃないか、ユアリア!!」
「そうなんでしよ!ユアリア、やったでし!!」

思わず抱き合って喜ぶ僕とユアリア。


しかし、ふと鼻を掠めるきな臭さ。
「ん・・・?」
「なんか臭いでしね・・・」

パチパチと木材の焼ける音。

「うぁぁああっ!火事だ!!」
「ひえぇえぇぇぇえぇぇっっ〜」
慌てふためく僕等をよそに、どんどんと日は燃え広がっていく。

「ちょ、ななな、何とかしろよ、ユアリアッ!!」
「何とかできないでしよ!!」

見た目のしょぼさに反比例して威力は高いらしく、墨も残らず、家は蒸発していく。
「家がぁっ!!」
「なくなっていくでし・・・」

後にはぽつんと取り残される僕とユアリア。

「ちゃんと、ユアリアたちに被害が出ないように、調節もできたでしよ・・・?エヘっ」
「・・・。確かに、怪我も火傷も、ないけどな・・・」
なにか、色々なものを失い過ぎた気がする。

「家も何もなくても、ユアリアは龍弦さんを見捨てたりしないでしよ!!」
「・・・」

「元からお金もなかったでしからね」
「・・・」

「・・・。龍弦さん?」
「昨日、コミケで買ってきた同人誌が・・・」

「そっちでしかっ!!?」



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